2026年4月24日(金)、デザインスクール「NOT DESIGN SCHOOL」主催のオンラインウェビナー「このやり方であってる? デザイナーが学びたいディレクション」が開催されました。最終的な申込み人数は565名、当日は約200名のデザイナー・ディレクターが参加し、終始活発なチャットが飛び交う盛況ぶりでした。
本記事では、まるみ株式会社代表・倉又美樹も登壇者の一人として参加した本イベントの内容を、当日の議論を振り返りながらレポートします。
メインスピーカー:宇野 健児(UNO) フリーランスWebディレクター/UXデザイナー。一般社団法人ディレクションサポート協会(DiSA)副会長。メディア、総合商社、イベント・エンタメ系など4桁ページ規模のサイトを多数手がけ、複数社を横断したプロジェクト推進の経験から、上流工程でのコミュニケーション設計を軸足に活動している。
登壇者:高橋 史帆(しのこ) フリーランスWebデザイナー/デザインアドバイザー。Adobe Community Expert。「あなたのビジネスの旗振り役に」をモットーに、情報設計から実装サポートまでを担う。若手デザイナーのメンターとしても活動中。
登壇者:倉又 美樹(まるみ) まるみ株式会社 代表取締役。Web/UI/DTPデザイナー、Adobe Community Expert。女子美術大学非常勤講師、デザイナーコミュニティ「まるみデザインファーム」主宰。
冒頭、UNOから提示された本セミナーのゴールはシンプルかつ実践的なものでした。
デザイナーからの視点に加えて、「ディレクターが何を見て、何を考えているのか」を知ることで、思考の範囲、視野を広げる。これにより、案件進行上の迷い、トラブルを減らす。
参加者の自己紹介チャットには、「にわかディレクターです」「デザイナーに発注する側です」「案件開始15分前にディレクターに任命されたデザイナーですw」「いきなりディレクター!!!!」など、想定通りのリアルな声が並びました。デザインの実務に立ちながらも、いつのまにかディレクション領域に踏み込まざるを得なくなる——多くの参加者が抱えるこの状況こそが、本セミナーの企画の出発点でした。
第1部では、Web制作案件の流れを6つのフェーズに分解して解説。
フェーズ 範囲
01 案件化フェーズ 初回ヒアリングから、契約・受注まで
02 要件定義フェーズ 受注後から、設計開始前まで
03 設計フェーズ 設計開始から、デザイン着手まで
04 デザインフェーズ デザイン開始から、コーディング着手まで
05 コーディングフェーズ Webサイト構築から、公開準備まで
06 公開フェーズ 公開作業から、公開完了まで
UNOは、それぞれのフェーズで「何が起きるべきか」「何が起きていなければ次に進めないか」を丁寧に整理。多くのデザイナーが「気づいたら設計フェーズが終わっている」「要件定義の議事録を見たことがない」といった曖昧さの中で仕事をしている現状に対し、各フェーズの境界線を明確に意識することの重要性が語られました。
第2部では、各フェーズに潜む典型的な落とし穴が共有されました。本セミナーを貫く3つのチェックポイントは以下のとおりです。
特に印象的だったのは、案件化フェーズで紹介された次のような実務上のキーワードです。
「修正回数を定義する」「変更と追加を切り分ける」といった一見当たり前に見えるルールが、実際の現場ではいかに守られていないか。デザイナーが受け身のまま線を引かないことで、自分自身を疲弊させていく構造に、多くの参加者が静かにうなずいていました。
要件定義から公開まで、各フェーズの落とし穴は表裏一体で続いていきます。「完成間近のちゃぶ台返し」「納期だけ決まっていて何も決まっていない」「想像していたのと違うと言われる」——いずれも、序盤の合意形成と情報整理を怠った結果として現れる症状であることが、フェーズを横断して繰り返し示されました。
第3部はFigJamを使ったセッション。「修正・変更が止まらない」「納期が無茶すぎる」といった、デザイナーなら一度は経験する典型的なトラブル事例を題材に、対処法を見ていく時間が設けられました。
ここではディレクター視点での落としどころの見つけ方、守りだけではなく打って出る方法が共有されました。一方的に飲むのでも、突き返すのでもなく、合意の組み直しに持ち込むための具体的な言い回しや交渉の順序が共有され、チャットには共感の声が次々と流れました。
このパートでは、AfterEffectsで動くワイヤーフレームのデモが披露される一幕も。「動くワイヤー!?」「すごーい!」「AfterEffectsの勉強会してほしい!」とチャット欄が一気に沸騰し、設計段階で「動き」まで握ることで、後工程の認識齟齬を大幅に減らせるという実例として強い印象を残しました。
また、「心得10箇条」として、デザイナーに覚えていてほしいディレクション上でのポイントが共有されました。
セミナーの結論として、冒頭のチェックポイントを再度提示しました。
ウェビナー資料より1.共通認識・合意形成を徹底しよう
2.決める勇気、断る勇気は持とう
3.トラブルの落としどころへ導く、またはダメージコントロールをしよう
この3点はいずれも、デザインスキルそのものではなく、デザイナーがプロジェクトの中で自分の立ち位置と責任範囲を引き受けるための姿勢に関するものです。ディレクター視点を持つということは、ディレクターになることではなく、自分の仕事をプロジェクト全体の中に位置づけ直すことに他ならない——本セミナー全体を通じて、その輪郭がはっきりと描かれました。
参加者から寄せられた声の一部をご紹介します。
特に最後の一言は、本セミナーで提供された情報の密度と実用性を象徴するコメントとして、運営側にも強く印象に残りました。
終了時に実施したアンケートでも好評をいただき、平均満足度4.74という結果をいただいております。
本ウェビナーは、デザイナーが日々の現場で感じる「これ、ディレクションってどうなってるんだっけ?」という小さなモヤモヤに、フェーズ単位の解像度で答えを返す試みでした。受講後すぐに「明日からやってみよう」と思える具体性があり、同時に、長く効く考え方の軸も持ち帰っていただけたのではないかと思います。
まるみ株式会社では、今後もデザイナーが現場で力を発揮するための学びの場づくりに取り組んでまいります。次回開催の際は、ぜひご参加ください。
主催: NOT DESIGN SCHOOL 開催日: 2026年4月24日(金) 20:00〜 形式: オンライン(Zoom)